こんばんは、でんです。
皆さんは「過食嘔吐症」という言葉を聞いたことがありますか?
「過食」と「嘔吐」という言葉を聞くと、何となくイメージがつく方もいるかもしれません。しかし、過食嘔吐症は単なる暴飲暴食や一時的な嘔吐とは異なります。今回は、精神保健福祉の観点から、過食嘔吐症について詳しく解説していきます。
過食嘔吐症とは?
過食嘔吐症は、摂食障害の一種で、短時間で大量の食物を摂取した後、体重増加を防ぐために自ら嘔吐したり、下剤を乱用したりする行為を繰り返す状態を指します。
「なぜ?」「どうして?」と疑問に思う方も多いでしょう。過食嘔吐症は、単なる心の問題ではなく、脳の機能にも深く関わっている複雑な病気なのです。
過食嘔吐症の症状
心身に現れる様々な症状
過食嘔吐症は、単に食べる量が多いというだけでなく、心身に様々な影響を与える複雑な病気です。
身体的な症状:
- 体重の変動: 過食と嘔吐を繰り返すことで、体重が大きく変動することがあります。
- 栄養不足: 必要な栄養素が十分に摂れないため、貧血、脱水症状、免疫力の低下など、様々な健康問題を引き起こす可能性があります。
- 消化器系のトラブル: 嘔吐を繰り返すことで、食道や胃に炎症を起こしたり、歯のエナメル質が溶けたりするなど、消化器系のトラブルを引き起こすことがあります。
- 内分泌系の異常: ホルモンバランスが乱れ、月経不順や骨粗鬆症など、女性特有の疾患のリスクが高まることがあります。
- その他の症状: むくみ、便秘、下痢、頭痛、倦怠感など、様々な身体的な症状が現れることがあります。
心理的な症状:
- 抑うつ状態: 過食嘔吐症の人は、抑うつ状態になりやすく、無気力感や絶望感にさいなまれることがあります。
- 不安感: 将来に対する不安や、人との関係に対する不安を感じることがあります。
- 自己嫌悪: 体重や体型に強いこだわりを持ち、自分のことを嫌い、価値がないと感じてしまうことがあります。
- 完璧主義: 何事にも完璧を求め、少しでも失敗すると自己評価が大きく下がってしまいます。
- 孤独感: 周囲の人と打ち解けることができず、孤独感を強く感じることがあります。
行動の変化:
- 食事に関する強迫的な行動: 特定の食品しか食べられない、細かく刻んで食べる、決まった順番で食べないと落ち着かないなど、食事に関する強迫的な行動が見られることがあります。
- 社会的な引きこもり: 体重や体型を隠そうとして、人との接触を避けるようになることがあります。
- 嘘をつく: 過食嘔吐のことを隠そうとして、周囲の人に対して嘘をつくことがあります。
症状は個人差が大きい
これらの症状は、人によって現れ方や程度が大きく異なります。
- 過食の頻度や量: 毎日過食する人もいれば、数日に一度だけ過食する人もいます。また、一度に食べる量も、人によって大きく異なります。
- 嘔吐の方法: 指を口に入れて嘔吐する人、下剤を乱用する人、過度な運動をする人など、様々な方法で体重増加を防ごうとします。
- 心理的な反応: 罪悪感や羞恥心を感じて、自分を責める人もいれば、無力感を感じて何もできなくなる人もいます。
過食嘔吐症の経過について
過食嘔吐症の一般的な経過
過食嘔吐症は、人によって経過が異なりますが、一般的には以下の様なパターンで進行することが多いです。
1. ダイエットの失敗と過食の始まり
- 体重への強いこだわり: 外見への強いこだわりや、周囲からの容姿に関するプレッシャーから、ダイエットを開始します。
- ダイエットの失敗: 厳格な食事制限や激しい運動など、非現実的なダイエット方法を試みることで、かえってリバウンドし、過食に繋がることがあります。
2. 過食と嘔吐の繰り返し
- 体重増加への恐怖: 過食によって体重が増加すると、強い恐怖感や罪悪感を抱き、体重増加を防ぐために嘔吐を繰り返します。
- 嘔吐の習慣化: 初めは体重増加を防ぐための手段だった嘔吐が、次第に習慣化し、ストレスを感じた時や感情をコントロールできなくなった時に、嘔吐に頼るようになります。
- 嘔吐がもたらす快感: 嘔吐によって一時的に不安や緊張が軽減される感覚を覚え、それが快感に繋がることがあります。
3. 病気の慢性化
- 生活リズムの乱れ: 過食と嘔吐を繰り返すことで、睡眠不足や食事の時間が不規則になるなど、生活リズムが乱れてしまいます。
- 社会的な孤立: 体重や体型を隠そうとして、人との接触を避けたり、学校や職場を休みがちになったりすることがあります。
- 合併症: 栄養不足、脱水症状、口腔内の損傷など、様々な身体的な合併症を引き起こす可能性があります。
- 精神的な苦痛: 罪悪感、羞恥心、孤独感、無力感など、強い精神的な苦痛に悩まされるようになります。
過食嘔吐症の経過における特徴
- 隠蔽性: 過食嘔吐症は、周囲に知られたくないという気持ちが強く、隠蔽する傾向があります。
- 波: 症状の程度は、時期によって大きく変動することがあります。
- 慢性化しやすい: 早期に治療を開始しないと、慢性化し、回復が難しくなることがあります。
過食嘔吐症の経過に影響を与える要因
- 性格: 完璧主義であったり、自己評価が低い傾向にある人は、過食嘔吐症になりやすいと言われています。
- 家族環境: 家族関係が良好でない場合や、家族の中に摂食障害の患者がいる場合、過食嘔吐症になるリスクが高まる可能性があります。
- 社会的なプレッシャー: 外見重視の社会風潮や、スリムな体型が求められるような環境は、過食嘔吐症の発症に影響を与える可能性があります。
過食症と過食嘔吐症の違い
過食症と過食嘔吐症は、どちらも摂食障害の一種であり、過食という共通点がありますが、いくつかの重要な違いがあります。
過食症
- 特徴: 短時間で大量の食物を摂取してしまう状態を繰り返します。
- 嘔吐などの代償行動: 過食の後、体重増加を防ぐために嘔吐をしたり、下剤を乱用したり、過度な運動をしたりするなどの代償行動は行いません。
- 体重: 過食を繰り返すことで、体重が増加する傾向にあります。
過食嘔吐症
- 特徴: 過食症と同様に、短時間で大量の食物を摂取してしまう状態を繰り返しますが、その後、体重増加を防ぐために嘔吐をしたり、下剤を乱用したり、過度な運動をしたりするなどの代償行動を行います。
- 体重: 過食と嘔吐を繰り返すため、体重は比較的安定していることが多いですが、栄養不足による健康問題を引き起こす可能性があります。
まとめると…
特徴 | 過食症 | 過食嘔吐症 |
---|---|---|
代償行動 | 行わない | 行う(嘔吐、下剤乱用、過度な運動など) |
体重 | 増加傾向 | 比較的安定(栄養不足の可能性あり) |
どちらの摂食障害も、本人の強い苦しみを伴う病気です。
どちらの病気か気になる場合は?
ご自身の状態がどちらに当てはまるか、一人で悩まずに専門の医療機関を受診することをおすすめします。
過食嘔吐症の原因について、より詳しく解説します。
過食嘔吐症の原因は、単一の要因ではなく、複数の要因が複雑に絡み合って引き起こされると考えられています。まだ完全には解明されていない部分もありますが、これまでの研究から、以下の要因が大きく関わっていることがわかっています。
1. 遺伝的要因
- 家族歴: 家族に摂食障害の患者がいる場合、発症リスクが高まることがわかっています。
- 遺伝子: 特定の遺伝子が過食嘔吐症の発症に関わっている可能性が指摘されていますが、まだ解明されていない部分が多く、今後の研究が期待されています。
2. 神経伝達物質の異常
- セロトニン: 情緒や食欲をコントロールする神経伝達物質であるセロトニンのバランスが崩れることが、過食嘔吐症の発症に関わっていると考えられています。
- ドーパミン: 快感に関わる神経伝達物質であるドーパミンも、過食嘔吐症の発症に影響を与えている可能性があります。
3. パーソナリティ
- 完璧主義: 何事にも完璧を求め、少しでも失敗すると自己評価が大きく下がってしまいます。
- 自己評価の低さ: 自分のことを嫌い、価値がないと感じてしまうことがあります。
- 衝動性: 強い衝動に駆られて、衝動的な行動をとってしまうことがあります。
4. 家族環境
- 非現実的な美の基準: 家族から痩せていることが求められたり、外見を過度に重視されたりする環境で育つと、過食嘔吐症になるリスクが高まる可能性があります。
- 家族内のコミュニケーション不足: 家族とのコミュニケーションがうまく取れず、孤独感や不安を感じることが、過食嘔吐症の発症に繋がることがあります。
5. 社会的なプレッシャー
- スリムな体型への過度な憧れ: マスコミやSNSなどを通じて、スリムな体型が美の基準として強調される社会的な風潮が、過食嘔吐症の発症に影響を与えている可能性があります。
- ダイエット産業の拡大: ダイエット食品やダイエットサプリメントなどの市場が拡大しており、過度なダイエットが過食嘔吐症の発症に繋がることがあります。
6. ダイエット経験
- 極端なダイエット: 無理な食事制限や激しい運動など、極端なダイエット経験は、過食嘔吐症の発症のリスクを高める可能性があります。
- 体重への強いこだわり: 体重に過度にこだわり、体重が増加することを極端に恐れることは、過食嘔吐症の発症に繋がることがあります。
7. その他
- ストレス: 学業、人間関係、仕事など、様々なストレスが過食嘔吐症の発症の引き金になることがあります。
- トラウマ: 過去のトラウマ体験が、過食嘔吐症の発症に影響を与えることがあります。
これらの要因は、単独で作用するのではなく、相互に影響し合いながら、過食嘔吐症を引き起こします。
重要なこと
- 原因は一人ひとり異なる: 上記の要因が全ての人に当てはまるわけではありません。
- 複合的な要因: 複数の要因が複雑に絡み合って、過食嘔吐症を引き起こすことがほとんどです。
- 専門家の診断が重要: 正確な原因を特定するためには、専門家による診断が必要です。
過食嘔吐症の治療について、より詳しく解説します。
過食嘔吐症の治療は、薬物療法、心理療法、栄養療法などを組み合わせて行われることが一般的です。治療法は、患者さんの症状や状態、治療への意欲など、様々な要因を考慮して、医師や専門家と相談しながら決定されます。
1. 薬物療法
過食嘔吐症の症状を軽減するために、以下の薬物が使用されることがあります。
- 抗うつ薬: セロトニンという神経伝達物質の働きを調節することで、気分の安定や食欲のコントロールを助けます。
- 抗不安薬: 過度の不安や緊張を緩和し、リラックス効果をもたらします。
- その他の薬: 場合によっては、睡眠薬や消化器系の薬などが処方されることもあります。
2. 心理療法
心理療法は、過食嘔吐症の根本的な原因を探り、問題解決の糸口を見つけるための治療法です。代表的な心理療法として、以下のものが挙げられます。
- 認知行動療法: 過食や嘔吐を引き起こすような間違った考え方や行動パターンを修正し、より健全な考え方や行動を身につけるための療法です。
- 対人関係療法: 人との関係性における問題点を解決し、社会的なスキルを向上させるための療法です。
- 精神分析療法: 過去の経験や無意識的な感情を探り、それらが過食嘔吐症にどのように影響しているのかを分析する療法です。
3. 栄養療法
栄養療法では、栄養士が患者さんの栄養状態を評価し、バランスの取れた食事を指導します。
- 食事療法: 規則正しい食事を摂ることで、体のリズムを整え、過食衝動を抑えます。
- 体重管理: 健康的な体重を目指し、体重の増減をコントロールします。
4. その他の治療
- グループセラピー: 同じような悩みを持つ人々と共に、お互いを励まし合いながら回復を目指す治療法です。
- 家族療法: 家族の理解と協力のもと、治療を進めるための療法です。
- 入院治療: 症状が重く、自宅での治療が困難な場合は、入院治療が必要となることがあります。
治療の目標
過食嘔吐症の治療の目標は、以下の通りです。
- 過食や嘔吐の頻度を減らす
- 体重を正常な範囲に維持する
- 心の安定を取り戻す
- 社会生活への復帰
治療期間
治療期間は、個人の症状や治療への取り組み方によって大きく異なります。数ヶ月から数年かかる場合もあります。
重要なこと
- 治療は長期戦: 短期間で効果が出るわけではなく、根気強く治療を続けることが大切です。
- 専門家との連携: 医師、心理士、栄養士など、様々な専門家と連携しながら治療を進めることが重要です。
- 周囲のサポート: 家族や友人からの理解とサポートは、治療を成功させる上で大きな力になります。
治療に関する注意点
- 治療を途中でやめない: 効果を感じなくても、治療を途中でやめてしまうと、症状が再発する可能性があります。
- 完璧を求めない: 治療中、完璧に食事制限を守ったり、常にポジティブでいることは難しいです。
- 寛容な心を持つ: 自分自身を責めすぎず、小さな成功を積み重ねていきましょう。
過食嘔吐症のセルフケアについて、より詳しく解説します。
過食嘔吐症の回復には、専門家による治療と並行して、ご自身のセルフケアも非常に大切です。ご自身が挙げられている内容に加え、さらに具体的な方法や注意点について詳しく解説します。
1. 規則正しい生活
- 睡眠: 7~8時間の睡眠を心がけ、質の高い睡眠をとるために、寝る前のスマホの使用を控えたり、リラックスできる環境を整えたりしましょう。
- 起床時間: 毎日同じ時間に起床し、体内時計をリセットすることで、生物時計を整え、安定した生活リズムを築きましょう。
2. バランスの取れた食事
- 3食規則正しく: スキップせず、3食規則正しく食事をとることで、血糖値の急激な変動を防ぎ、過食の衝動を抑えましょう。
- 間食: 健康的な間食(ナッツ、果物など)を摂ることで、空腹感を満たし、過食を防ぐことができます。
- 食事記録: 一日の食事内容を記録することで、自分の食生活を見直し、改善点を見つけやすくなります。
3. 適度な運動
- 有酸素運動: ウォーキング、ジョギング、水泳など、心拍数を上げて行う有酸素運動は、ストレス解消や気分転換に効果的です。
- 筋力トレーニング: 筋力トレーニングは、基礎代謝を上げ、心身の安定にも繋がります。
- ヨガやストレッチ: ヨガやストレッチは、心身をリラックスさせ、柔軟性を高める効果があります。
4. ストレス管理
- ストレスの原因を特定: ストレスの原因となっているものを具体的に把握し、可能な限り避けるようにしましょう。
- リラクゼーション: 深呼吸、瞑想、アロマテラピーなど、自分に合ったリラックス方法を見つけて実践しましょう。
- 趣味を持つ: 趣味に没頭することで、ストレスから解放され、心の安定を図りましょう。
5. 周囲の人への相談
- 信頼できる人に話す: 家族、友人、信頼できる人に、自分の気持ちを打ち明け、話を聞いてもらいましょう。
- 専門家への相談: 心理療法士や栄養士など、専門家のサポートを受けることで、より効果的な治療を進めることができます。
- 自助グループ: 同じような悩みを持つ人々と交流することで、孤独感を解消し、励ましの言葉を得ることができます。
その他のセルフケア
- 日記をつける: 自分の感情や行動を記録することで、自分の状態を客観的に把握し、改善点を見つけることができます。
- 肯定的な自己暗示: 自分のことを大切にし、肯定的な言葉を自分にかけるようにしましょう。
- 目標設定: 小さな目標を立て、達成していくことで、自信をつけ、モチベーションを維持しましょう。
- 環境を整える: 過食や嘔吐を誘発するような環境を避け、リラックスできる空間を作りましょう。
注意点
- 無理のない範囲で: 完璧を求めすぎず、自分のペースで少しずつ取り組むことが大切です。
- 自己判断での治療の中断は避ける: 専門家の指導のもと、治療を継続することが重要です。
- 周囲のサポート: 家族や友人からの理解とサポートは、治療を成功させる上で大きな力になります。
まとめ
過食嘔吐症は、本人だけでなく、周囲の人も苦しめる深刻な病気です。
しかし、適切な治療を受けることで、回復することは可能です。
もし、ご自身が、または周囲の方に過食嘔吐症の症状が見られる場合は、一人で悩まずに、専門家にご相談ください。
コメント