こんにちは、でんです。
「拒食症」という言葉は、多くの人が一度は耳にしたことがあるかもしれません。しかし、具体的にどのような病気なのか、その深刻さや、なぜ多くの人がこの病気になってしまうのか、疑問に思う方も多いでしょう。
拒食症は、体重や体型への過度なこだわりから、極端に食事を制限したり、嘔吐を繰り返したりするなど、異常な食行動を繰り返す病気です。単なるダイエットとは異なり、精神的な問題が深く関わっており、生命を脅かす危険性もある深刻な病気です。
拒食症の症状
身体的な症状
拒食症による身体的な症状は、栄養不足が原因で様々な器官に影響を及ぼします。
- 体重減少: 最も顕著な症状です。健康な体重から著しく減少し、やせ細ってしまうことがあります。
- 低体温: 基礎代謝が低下するため、常に体が冷たく感じられます。
- むくみ: タンパク質不足により、体内に水分が溜まりやすくなります。
- 便秘: 食物の量が減り、腸の働きが低下するため、便秘になりがちです。
- 貧血: 鉄分不足により、だるさや息切れを感じやすくなります。
- 脱水症状: 水分摂取量が減るため、口渇、めまい、ふらつきなどの症状が現れます。
- 心拍数低下: 心臓の働きが弱まり、心拍数が遅くなることがあります。
- その他の症状: 髪の毛が薄くなる、爪がもろくなる、月経が止まる、骨がもろくなるなど
具体的な例
- 体重が数ヶ月で10kg以上減ってしまった
- 冬でもいつも手足が冷たい
- 朝起きると顔がむくんでいる
- 便秘が数日続く
- 階段を上ると息切れがする
- 立ちくらみがする
- いつもだるくてやる気が出ない
精神的な症状
拒食症は、身体的な症状だけでなく、精神的な症状も伴うことが特徴です。
- 体重や体型への過度なこだわり: 体重や体型に異常に敏感になり、わずかな体重増加も許せません。
- 自己評価の低下: 外見を基準に自分の価値を決めてしまい、自己肯定感が低い状態になります。
- 不安感: 将来への不安や、体重が増えてしまうのではないかという不安に常に悩まされます。
- 抑うつ状態: 孤独感、無力感、絶望感などに襲われ、日常生活に支障をきたすことがあります。
- 完璧主義: 何事にも完璧を求め、少しでも目標から外れると強い自己嫌悪に陥ります。
- 孤独感: 周囲の人と打ち解けられず、孤立してしまうことがあります。
具体的な例
- 鏡を見るのが怖い
- 服を選ぶのが大変で、いつも同じような服しか着ない
- 好きな食べ物を我慢するのがつらい
- いつも疲れていて、何もやる気が起きない
- 自分は価値のない人間だと感じている
- 友達と遊ぶのが億劫
セルフチェック項目
以下の項目に当てはまるものが複数ある場合は、一度専門家にご相談することをおすすめします。
- 体重が急に減った
- 食欲が減退した
- 食べ物を極端に避ける
- 体重や体型について過度に気にしている
- 自己評価が低い
- 不安感や抑うつ感が強い
- 周囲の人とのコミュニケーションが減った
注意:
- 上記の症状は、拒食症の全てではありません。
- 症状は個人差が大きく、全ての症状が現れるとは限りません。
- 自宅で診断することは難しいため、専門医の診断を受けることが大切です。
拒食症の経過について
拒食症は、初期には比較的軽微な症状から始まり、徐々に悪化していくことが多い病気です。それぞれの段階で現れる特徴的な症状や、周囲の変化について詳しく見ていきましょう。
初期段階
- 食事制限の開始: ダイエットを目的とした食事制限から始まり、徐々に食事量が減っていきます。
- 特定の食品の拒否: 特定の食品を「太る」という理由で避けるようになります。
- 過度な運動: 体重増加を防ぐために、過度な運動を始めることがあります。
- 体重減少: 食事制限と過度な運動によって、体重が徐々に減っていきます。
- 周囲の変化: 周囲からは「痩せたね」と褒められることが多く、本人はそれを肯定的に捉えがちです。
中期段階
- 体重の著しい減少: 体重が健康な範囲を大きく下回り、低体重状態になります。
- 身体機能の低下: 倦怠感、寒がり、便秘、貧血、むくみなどの症状が現れ、日常生活に支障が出始めます。
- 精神的な変化: 不安感、抑うつ状態、孤独感などが強まり、周囲とのコミュニケーションが減ることがあります。
- 社会生活への影響: 学校や仕事に行けなくなる、友人との関係が疎遠になるなど、社会生活に大きな影響が出ます。
- 周囲の変化: 周囲からは「痩せすぎ」「病気じゃない?」と心配されることが増えますが、本人は自分の状態を否定し、治療を拒むことがあります。
後期段階
- 生命に関わる合併症: 心臓機能の低下、腎臓障害、骨粗鬆症など、生命に関わる合併症を起こす可能性があります。
- 精神状態の悪化: 妄想や幻覚などの精神症状が現れることもあります。
- 入院が必要な状態: 体重が極端に減少し、生命の危険が迫っている場合は、入院治療が必要になります。
各段階における周囲の変化
- 初期: 周囲は、ダイエットに成功していると思い、本人の行動を肯定的に捉える傾向があります。
- 中期: 本人の様子がおかしいことに気づき、心配する人が現れます。しかし、本人は自分の問題を認めようとせず、周囲との間に溝が生じる可能性があります。
- 後期: 本人の状態が深刻になり、家族や友人だけでなく、学校や職場など、周囲の人々が協力して治療に当たる必要があります。
拒食症の経過は個人差が大きい
拒食症の経過は、個人によって大きく異なります。上記は一般的な経過であり、必ずしも全員が同じような経過を辿るとは限りません。
重要なのは、早期に治療を開始することです。
早期に治療を開始することで、重篤な状態になるのを防ぎ、回復の可能性を高めることができます。
周囲の人へ
- 拒食症に気づいたら、本人に優しく声をかけ、専門家への相談を促しましょう。
- 本人の気持ちを尊重し、無理強いは避けましょう。
- 責めたり、否定的な言葉をかけたりしないようにしましょう。
- 周囲の人も一緒に、治療に協力することが大切です。
拒食症の原因
拒食症の原因は、単一ではなく、複数の要因が複雑に絡み合って発症すると考えられています。まだ完全に解明されていない部分もありますが、現在の研究では、主に以下の3つの要因が挙げられています。
1. 遺伝的要因
- 家族歴: 拒食症の患者は、家族に摂食障害の患者がいる割合が高い傾向があります。これは、遺伝的な素因が拒食症の発症に関わっている可能性を示唆しています。
- 神経伝達物質: セロトニンやドーパミンなどの神経伝達物質のバランスが、食欲や感情のコントロールに影響を及ぼし、拒食症の発症に関わっていると考えられています。
2. 心理的要因
- 完璧主義: 何事にも完璧を求め、少しでも目標から外れると強い自己嫌悪に陥る傾向があります。
- 低自尊心: 自分のことを否定的に評価し、価値がないと感じてしまう傾向があります。
- ストレス: 家庭環境、学校生活、人間関係など、様々なストレスがトリガーとなり、拒食症を発症することがあります。
- トラウマ: 過去の辛い経験が、心の傷となり、拒食症の発症に繋がることがあります。
- 抑うつ状態: 悲しみや絶望感、無力感などが、拒食行動を悪化させることがあります。
3. 社会的要因
- ダイエットブーム: 社会全体で痩せていることが美とされ、ダイエットが推奨される風潮が、拒食症の発症を助長する可能性があります。
- メディアの影響: 雑誌やテレビ、SNSなど、メディアが発信する美の基準が、若者を中心に強い影響を与え、理想の体型への過度なこだわりを植え付けてしまうことがあります。
- 摂食障害に関する誤った情報: 摂食障害に関する正しい知識が不足しているために、誤った情報に基づいたダイエットを試みてしまい、拒食症を発症してしまうことがあります。
これらの要因がどのように絡み合うか
これらの要因は、単独で拒食症を引き起こすのではなく、複数の要因が複雑に絡み合って発症すると考えられています。例えば、遺伝的な素因がある人に、ストレスやプレッシャーが加わることで、拒食症が発症しやすくなるというケースが考えられます。
重要なのは、多角的な視点から原因を探ること
拒食症の原因は、一人ひとり異なり、複雑なものです。そのため、個々のケースに合わせて、心理的な要因、社会的要因、生物学的要因など、多角的な視点から原因を探ることが重要です。
治療法について
拒食症の治療は、単に体重を増やすだけでなく、身体的な健康を取り戻し、心の状態を安定させ、社会生活に復帰できるよう、多角的なアプローチで行われます。
治療の目標
- 体重回復: 健康な体重まで増やし、身体機能を回復させること。
- 精神状態の改善: 体重や体型への過度なこだわり、低自尊心、不安感などを改善し、心の安定を図ること。
- 社会復帰: 学校や仕事など、社会生活に復帰できるように支援すること。
治療法
1. 食事療法
- 専門家による指導: 栄養士や医師など、専門家による指導のもと、バランスの取れた食事を摂ります。
- 食事量の増加: 徐々に食事量を増やしていくことで、体重を回復させます。
- 食事の記録: 食べたものや量を記録することで、食事量を把握し、目標に向かって取り組むことができます。
- メリット: 体重回復に最も効果的な方法であり、身体機能の改善に繋がります。
- デメリット: 初期は、食事に対する抵抗感や不安感を感じる人もいます。
2. 心理療法
- 認知行動療法: 歪んだ思考パターンや行動パターンを修正し、より現実的な考え方や行動ができるようにすることを目指します。
- 精神動態療法: 過去の経験や感情を探索し、自己理解を深めることで、心の状態を安定させることを目指します。
- 家族療法: 家族とのコミュニケーションを取りながら、治療を進めていく方法です。
- メリット: 根底にある心理的な問題に対処することで、再発を防ぐ効果が期待できます。
- デメリット: 治療には時間がかかることがあります。
3. 薬物療法
- 抗うつ薬: うつ症状や不安感を改善する効果があります。
- 抗不安薬: 不安感を軽減する効果があります。
- メリット: 心理療法の効果を高める補助的な役割を果たします。
- デメリット: 全ての人に効果があるわけではなく、副作用が出る可能性もあります。
4. 入院治療
- 体重が極端に低い場合: 生命の危険がある場合や、自宅での治療が困難な場合は、入院治療が必要になります。
- 24時間体制での管理: 専門スタッフが、食事、体重測定、心理療法などを24時間体制で行います。
- メリット: 短期間で体重を回復させることができ、専門的な治療を受けることができます。
- デメリット: 社会生活から離れるため、ストレスを感じる人もいます。
治療の組み合わせ
多くの場合、これらの治療法を組み合わせて行うことで、より効果的な治療が期待できます。
治療の注意点
- 治療は長期戦: 拒食症の治療は、短期間で完治するものではありません。根気強く治療を続けることが大切です。
- 再発のリスク: 治療を終了した後も、再発のリスクは常にあります。定期的な通院や、セルフケアを続けることが重要です。
- 周囲のサポート: 家族や友人、医療スタッフなど、周囲のサポートが回復を大きく左右します。
セルフケア:回復への第一歩を踏み出すために
拒食症の治療は、専門家によるサポートが不可欠ですが、ご自身でもできるセルフケアも非常に大切です。セルフケアは、治療の効果を高め、回復を促進するだけでなく、再発予防にも繋がります。
食事に関するセルフケア
- バランスの取れた食事: 三食規則正しく、主食、副菜、汁物をバランス良く摂るように心がけましょう。
- 少量多頻度: 一度にたくさん食べるのではなく、少量をこまめに食べるようにしましょう。
- 栄養価の高い食品: 野菜、果物、魚、肉など、栄養価の高い食品を積極的に摂り入れましょう。
- 食事の記録: 食べたものや量を記録することで、食事量を把握し、目標に向かって取り組むことができます。
- 食事を楽しむ: 食事を楽しみながらゆっくりと食べることを心がけましょう。
心のケアに関するセルフケア
- 友人や家族に相談する: 自分の気持ちを正直に話し、理解を求めましょう。
- 趣味を楽しむ: 好きなこと、楽しいことをして、気分転換を図りましょう。
- リラックスできる時間を作る: ヨガ、瞑想、アロマテラピーなど、自分に合ったリラックス方法を見つけて実践しましょう。
- 日記をつける: 自分の気持ちを言葉にすることで、整理することができます。
- 肯定的な言葉をかける: 自分自身を大切にし、肯定的な言葉をかけてあげましょう。
その他のセルフケア
- 専門家への相談: 精神科医、臨床心理士など、専門家への相談は、問題解決の大きな助けになります。
- 自助グループへの参加: 同じような悩みを持つ人と交流することで、孤独感を解消し、情報交換をすることができます。
- 運動: 体力に合わせた軽い運動をすることで、心身のリフレッシュにつながります。
- 十分な睡眠: 睡眠不足は、精神状態を不安定にするため、質の高い睡眠を心がけましょう。
- 情報収集: 摂食障害に関する正しい知識を身につけましょう。
セルフケアを続ける上での注意点
- 無理のない範囲で: 完璧を求めすぎず、少しずつでも良いので、自分に合ったペースで取り組むことが大切です。
- 焦らず、ゆっくりと: 回復には時間がかかることを理解し、焦らず、ゆっくりとステップアップしていきましょう。
- 挫折してもあきらめない: 途中でつまずいたり、挫折したりすることもあるかもしれません。そんな時は、周囲の人を頼ったり、専門家に相談したりして、もう一度立ち上がってみましょう。
まとめ
拒食症は、治療すれば必ず回復できる病気です。 早期に治療を開始し、周囲のサポートを得ながら、専門家の指導のもと適切な治療を受けることで、必ず克服できます。
大切なのは、一人で抱え込まず、誰かに相談することです。 家族、友人、そして専門家。あなたの回復をサポートしてくれる人はたくさんいます。
あなたは決して一人ではありません。 希望を持って、一歩ずつ前に進んでいきましょう。
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